ミサにおいて、誰がどこを歌うべきだといった決まりがあるのですか?

感謝の祭儀には、原則として、司祭が歌うべきところ(各祈願文や奉献文など)、先唱者が歌うべきところ(答唱詩編の詩編部分や共同祈願の意向など)、会衆が歌うべきところ(上記以外のほとんどの部分)と、大きく三つの区別があります。

「ローマ・ミサ典礼書の総則」19項は、感謝の祭儀における歌の重要性について次のように定めています。

「主の再臨を待ち望みつつ一つに集まるキリスト信者は、詩編、賛歌、霊歌をともに歌うように使徒からすすめられている(コロサイ3・16参照)。
歌は、心の喜びのしるしであるからである(使徒言行録2・46参照)。
いみじくも聖アウグスチヌスは、『歌うのは愛している証拠』と言った。
また、古くからのことわざにも、『よく歌う人は倍祈ることになる』とある。
したがって、国民性やそれぞれの集会の能力に留意したうえで、祭儀においては、大幅に歌を用いるものとする。
ただし、本来歌うようになっている式文であっても、必ずしも全部を歌う必要はない。
しかし、実際に歌う部分を選ぶ場合には、重要性の大きいものの中からまず選ぶべきである。
とりわけ、司祭または奉仕者が歌うべきもので、会衆の応唱がこれに伴うもの、もしくは司祭と会衆が同時に歌うべきものから始めるべきである。
各国の信者が集まる機会も日増しに多くなっているので、このような信者が、少なくともミサの通常式文のある部分、とりわけ、信仰宣言と主の祈りを、やさしい旋律を用いてラテン語でともに歌うことができることが望ましい。」

また誰がどのように歌うかの指示もあります。その部分だけを抜粋引用しましょう。

26
入祭の歌は聖歌隊と会衆が交互に、あるいは先唱者と会衆が交互に、あるいは会衆または聖歌隊のみが全部を通して歌う。

30
(あわれみの賛歌)は、信者が主に呼びかけて、そのあわれみを願う歌であるから、通常、一同によって、すなわち、この役割をもっている聖歌隊または先唱者と会衆とによって行われる。

31
(栄光の賛歌)。
信者会衆、または会衆と聖歌隊とが交互に、あるいは聖歌隊が歌う。

33
(ことばの典礼)キリストは、ご自身のことばによって信者の間に現存される。
この神のことばを、会衆は歌によって自分のものとし、信仰宣言によって自己に結合する。

36
詩編唱者、すなわち詩編の歌唱者は、朗読台または他の適当な場所で詩編の先唱句を述べ、会衆一同は座って聞く。
さらに、詩編が一挙に、すなわち答唱なしに述べられるのでないかぎり、会衆は通常、答唱をもって参加する。

39
朗読後の詩編は、歌わない場合には朗唱するものとする。
アレルヤ唱、または福音朗読前の唱句は、歌わない場合、省略することができる。

44
(信仰宣言が)歌唱される場合には、通常、一同によって、もしくは交互に歌われるものとする。

50
(供えものの準備)。
行列して供えものを運ぶ間、奉納の歌が歌われる。・・・歌い方についての規定は、入祭の歌と同じである(26参照)。

55
応唱:
全会衆が、天の諸能力に合わせて、感謝の賛歌を歌うか、あるいは唱える。

56

主の祈り:
・・・祈りへの招き、祈りそのもの、副文、そして会衆がこれをしめくくる栄唱は、歌によるか、あるいは大きな声で唱える。


平和の賛歌:
パンを割り、パンの一部をカリスの中に入れる間に、通常、平和の賛歌が聖歌隊あるいは先唱者によって歌われるか、大きな声で唱えられ、会衆はこれに応答する。


司祭と信者が秘跡を拝領している間に、拝領の歌が歌われる。
それは、拝領者の霊的一致を声の一致で表現し、心の喜びを示し、キリストのからだを受けに行く行列を、より兄弟的なものにするためである。
歌は、司祭が拝領するときに始められ、信者がキリストのからだを拝領している間中、適当と思われるときまで続けられる。
・・・聖歌隊だけ、または聖歌隊もしくは先唱者と会衆とによって歌われる。


拝領が終わってから、司祭と信者は、適宜、しばらくの間沈黙のうちに祈る。
望むならば、賛歌、詩編あるいは他の賛美の歌を、全会衆で歌うこともできる。

62
アレルヤ唱は、聖歌隊あるいは先唱者が先導して一同が起立して歌い、場合によっては繰り返す。
唱句は聖歌隊あるいは先唱者によって歌われるが、日本では、聖歌隊がない場合や先唱者がいない場合は一同で歌うこともできる。


ここで、ひとこと、聖歌隊について触れておきましょう。

聖歌隊の役割は会衆に奉仕することにあります。
会衆の中にあって、司式司祭のことばと行動に敏感に力強く反応し、全体の雰囲気を盛り上げ、引っ張る役割があります。
ですから、会衆から遊離している聖歌隊、合唱美を追求する聖歌隊、会衆を聴衆か観衆のように考えている聖歌隊はミサにふさわしくありません。

会衆に奉仕する聖歌隊が第一に心がけるべきことは、毎日曜の答唱詩編とアレルヤ唱の準備です。
答唱詩編とアレルヤ唱こそが、その日の聖書朗読に密接に関係し、その日の特色をよく表しているからです。
会衆をリードできるように答唱句の部分をよく練習しておく必要があります。
その後、詩編の部分を歌う先唱者を選びます。
この詩編の先唱者を交代でできるようになることが、奉仕する聖歌隊の重要な役割の一つです。
詩編を明瞭に先唱することで、沈黙のうちに聖書を味わう会衆に奉仕するからです。
アレルヤ唱は会衆全員で歌います。
全員が元気よく歌えるようにリードするのが聖歌隊の役目です。