侍者とは何をする人ですか?

正式には「祭壇奉仕者」と呼ばれ、集会祭儀やミサにおいて神さまと人々に奉仕する人のことです。
典礼が行われる場(祭壇や朗読台、司式席や会衆席など)と典礼で用いられるもの(パンやぶどう酒、祭器や祭服など)の準備をし、集まった人々が心を合わせて祈ることが出来るように司祭の手助けをする役割をもっています。


古くは「侍祭」と呼ばれ、5世紀頃の記録によれば、ろうそくの火を灯し、ぶどう酒や水の準備をし、教皇が聖別したホスチアを他の教会に運ぶ役割をもっていました。
トリエント公会議(16世紀)で「侍祭」は、司祭候補者だけに限られました。
しかしミサを捧げるためには最低一人、司祭の祈りに応答する者が必要だとされたことから、「侍祭」がいない場合は、「侍者」あるいは「ミサ答え」と呼ばれる少年が奉仕するようになりました。

第二バチカン公会議の典礼刷新を受けて、教皇パウロ六世は、司祭候補者だけに限られていた「侍祭」を廃止し、あらたに信徒にも委託できる「教会奉仕職」と「宣教奉仕職」という二種類の奉仕職を定めました(教皇パウロ六世自発書簡「ミニステリア・クエダム」1972年参照)。
さらに典礼秘跡省は、長年、男性だけに限られていた祭壇への奉仕を女性にも認めました(典礼秘跡省「クレド・ドベロソ」1994年、「カトリック新聞」1994年4月:3281号参照)。
祭壇への奉仕は、男性でも女性でも、洗礼を受けている信者ならば果たすことができる務めとなったのです。

典礼が行われる場や典礼で用いられるもの準備の仕方、祭壇奉仕の役割、ミサにおける具体的な動きとその意味などは、土屋吉正著『ミサがわかる ? 仕え合う喜び』(オリエンス宗教研究所)の「第三編 祭壇奉仕の役割と実践」(79-106ページ)に詳述されています。

また伝統的な侍者の役割を子ども向けに紹介した「侍者の仕事」もご参照ください。

教皇パウロ六世自発書簡「ミニステリア・クエダム」1972年 (私訳)

教会は、神に正しく礼拝をささげるために、また必要に応じて神の民に奉仕するために、すでに非常に古い時代において、いくつかの奉仕職を定めていました。
これらの奉仕職によって、典礼と愛の務めがいろいろな実状にしたがって行われるよう、信者に委託されたのです。
このような任務は、特別な儀式によって授けられることが多く、神の祝福を願う祈りが行われた後、信者は教会制度の一定の職務を果たすために、特別な階層または階級に属するものとされました。

これらの任務の中で、典礼行為と密接に結ばれているもののいくつかは、次第に聖なる職位を受けるための準備段階と見なされるようになりました。
ラテン教会では、上級職位と呼ばれる司祭職、助祭職、副助祭職に対して、守門、読師、抜魔師、侍祭が下級職位と呼ばれました。
また、あらゆる所ではないにしても、一般に下級職位は、司祭職に進む者に限って授けられるようになりました。
ところで、下級職位は、いつも同じものではありませんでしたし、またそれらに関連のある多くの任務は、現代でもそうであるように、信徒によっても行われてきたものです。
このような慣例を再検討し、現代の必要に適応させて、奉仕職の中の不要なものを廃止し、有用なものを残し、必要があれば新たに定めるとともに、聖なる職位の候補者に要求すべき事柄を規定することは、時期にかなったことだと思われます。

第2バチカン公会議の準備段階で、教会の多くの司牧者は、下級職位と副助祭職の再検討を求めました。
公会議は、これについてはラテン教会のために何も決定しませんでしたが、問題解決に道を開くためのいくつかの原則を明らかにしました。
典礼の全般的で秩序のある刷新について公会議が定めた原則(注1)には、典礼集会における奉仕職に関する事柄も含まれていて、祭儀の式次第そのものからも教会にいろいろな職位と奉仕職のあることが示されています(注2)
したがって、第二バチカン公会議は、次のように定めています。

「祭儀においては、司祭も信者も、各自が自分の役割を果たし、そのことがらの性質と典礼上の規定によって、自己に属するところのみを、そしてそのすべてを行うべきである」(注3)

この主張は、その少し前のところで同じ憲章に次のように記されています。
「母なる教会は、すべての信者が、典礼の執行への、充実した、意識的な、行動的な参加へ導かれるようせつに希望している。
このような参加は、典礼自身の本質から要求されるものであり、キリストを信ずる民は、『選ばれた民族、王の祭司職、聖なる民、獲得された民』(一ペトロ2:9. 2:4-5参照)として、洗礼によってこれに対する権利と義務を持つのである。
この、全信徒による充実した、行動的参加は、聖なる典礼を刷新し、促進するにあたって、最も留意すべきことである。
それは、信者が真のキリスト教精神をくみ取る、欠くことのできない第一の源泉であり、したがって、司牧者は、全司牧活動にわたり、必要な教育を通してそれを追求しなければならない」(注4)

今後も保存するとともに、また現代の必要に適応させるべき特定の職務の中に、特に、ことばと祭壇の奉仕職に密接に関連するもので、ラテン教会において、読師、侍祭、副助祭と呼ばれているものがあります。
これらを保存し適応させて、今後は、「宣教奉仕者」と「教会奉仕者」の二つの任務とし、その中に副助祭の役目をも含ませることが適切です。

ラテン教会に共通のこのような職務のほかに、司教協議会は、特殊な理由から、自分たちの地域に必要な、または非常に有用であると判断されるその他の職務の制定を使徒座に申請することができます。
たとえば守門、抜魔、カテキスタの任務(注5)、愛の奉仕活動に従事する人に託されるその他の任務などです。
特に、これらの奉仕職が助祭に与えられていないところでは必要です。

事柄の真実性と現代の考えに照らして、今後は上記の奉仕職を下級職位と呼ばないことにし、それらの授与は「叙階式」ではなく、「選任式」と呼ぶことにします。
なお、助祭職を受けた者だけが本当の意味での教役者(クレリクス)であり、またそう認められます。

こうして、教役者と信徒の区別、また教役者に留保される固有の領域と、信徒に委託できる領域の区別がもっと明確になり、両者の相互関係もいっそう明らかになります。
それは「信徒の共通祭司職と職位的または位階的祭司職とは、段階においてのみならず本質において異なるものであるとはいえ、相互に秩序づけられているものであって、それぞれ独自の方法で、キリストの唯一の祭司職に参与している」(注6)からです。

こうして、あらゆる事柄を慎重に検討し、専門家の見解を聞き、諸司教協議会に諮問してその意見を考慮し、この事項を管轄するいろいろな省庁の構成員である敬愛する兄弟たちにも相談したうえで、教皇の使徒権をもって、下記の規則を定め、この手紙をもってこれを公布します。

なお、このことに関連して、必要があれば、またその限りにおいて、現行の教会法典の規定を廃止します。
 
  1. 剃髪式は廃止する。助祭職を受けることによって教役者の一員となる。
  2. 今まで、下級職位と呼ばれていたものは、今後「奉仕職」と呼ばれる。
  3. 奉仕職は信徒に委託することができる。
    したがって、それは叙階の秘跡の候補者だけに保留すべきものではない。
  4. 現代の必要に適応され、ラテン教会全体において保存すべき奉仕職は、宣教奉仕職と教会奉仕職の二つである。
    従来、副助祭に託されてきた任務は、宣教奉仕者と教会奉仕者とに委ねられ、ラテン教会では、副助祭と呼ばれる上級職位は廃止される。
    このことは、司教協議会の判断によって、ある地域で教会奉仕者が副助祭と呼ばれることを妨げるものではない。
  5. 宣教奉仕者は、典礼集会において神のことばを朗読するという固有の任務のために選任される。
    したがって、ミサとその他の聖なる祭儀において、聖書(福音書を除く)を朗読し、詩編唱者が不在のときには聖書朗読の合間に詩編を歌唱し、助祭または歌唱者がいないときには共同祈願の意向を唱え、歌による会衆の参加を指導し、諸秘跡をふさわしく受けるよう信徒に教える。
    必要があれば、典礼行為の中で聖書朗読をするよう臨時に任命された信徒たちの準備を手伝うことができる。
    これらの任務をよく果たすことができるよう、宣教奉仕者はたえず聖書に親しまなければならない。
    宣教奉仕者は、自分の職務をわきまえ、日ごとに聖書の息吹と感動を自分のものとし(注7)、その理解を深めて、主のよき弟子となるよう、全力を尽くすとともに、効果的な手段を用いなければならない。
  6. 教会奉仕者は助祭を助け、司祭に仕えるために選任される。
    したがって祭壇の奉仕を務め、典礼行為、特にミサの祭儀において司祭と助祭を助ける。
    なお聖体拝領の特別な奉仕者として、教会法典(旧教会法) 845条に掲げられている奉仕者が不在のとき、または病気・老齢・他の司牧任務によって妨げられているとき、あるいは聖なる食卓に連なる信者があまりにも大勢で、ミサの祭儀が長くなりすぎるときには、聖体を授けることができる。
    また特別な状況の場合には、信者の礼拝のために聖体を顕示し、あとで聖櫃に納める務めを委任されることもできる。
    ただし会衆を祝福することはできない。
    また必要があれば、臨時に任命された信者で、典礼行為の中でミサ典礼書、十字架、ろうそくなどを運んだり、その他類似の務めを行って、司祭や助祭を助ける者たちを、教育することができる。
    教会奉仕者は、感謝の祭儀に熱心に参加し、聖体を拝領し、理解を深めるよう努力するならば、これらの務めをよく果たすことができるであろう。
    教会奉仕者は、祭壇に奉仕するよう特別に定められているのであるから、公の礼拝に関係のあるすべての事柄を学び、その深い霊的意味を理解するように努力して、日々自分のすべてを神にささげ、聖堂内ではすべての人にまじめさと敬虔の模範を示し、キリストの神秘体である神の民、特に弱者と病者に親切であるよう努めなければならない。
  7. 教会の尊い伝統に基づいて、この宣教奉仕者と教会奉仕者の選任は、男性に限られる。
  8. これらの奉仕職に選任されるためには、下記の事項が必要である。
    1. 候補者が自由意志をもって作成し署名した申請書を、受け付ける権限をもった裁治権者(司教、または教役者修道会では上級上長)に提出すること。
    2. 司教協議会が定めた適切な年齢と特別な資質。
    3. 神とキリストの教会に忠実に仕える強固な意志。
  9. 奉仕職は、裁治権者によって、使徒座が改訂公布する「宣教奉仕者選任式」「教会奉仕者選任式」と呼ばれる典礼儀式を通して授けられる。
  10. 同一人に一つ以上の奉仕職を授ける場合には、宣教奉仕職と教会奉仕職の選任の間に、使徒座または司教協議会によって定められた中間期を置く。
  11. 助祭職と司祭職の候補者は、将来の神のことばと祭壇の任務によりよく備えるために、宣教奉仕と教会奉仕の奉仕職務を、まだ受けていなければ受けて、適当な期間それを果たさなければならない。
    また候補者に奉仕職への選任を免除する権限は、使徒座に保留される。
  12. 奉仕職への選任は、教会から生活費または報酬を要求する権利を与えない。
  13. 奉仕職への選任式文は、ローマの管轄省から近く公布される。

上記の規律は、1973年1月1日をもって発効する。

私は、自発形式による本書簡によって定めたすべての事柄が、
どのような反対事項にもかかわらず、確定され、確認されることを命じます。

ローマ、聖ペトロのもとで、在位10年、
1972年8月15日、聖なるおとめマリアの被昇天の祭日

教皇 パウロ6世

(注1)「典礼憲章」62と同21参照。
(注2)「ローマ・ミサ典礼書の総則」58参照。
(注3)「典礼憲章」28。
(注4)「典礼憲章」14。
(注5)「教会の宣教活動に関する教令」15、同17も参照。
(注6)「教会憲章」10。
(注7)「典礼憲章」24、「神の啓示に関する教義憲章」25参照。

(私訳:小田武彦)